コミックマーケット77・3日目・Key系購入同人誌感想

3回目を迎え恒例になりました、同人二次創作の購入物感想を簡単に述べてまいります。今回はシナリオライタ論集の企画・調整等で遅くなりました。
PINSIZEだけはKey系ではないですが。2/14に続き、2/20追記。2/27さらに追記。これで完了です。……と思いましたが2/28津波対策後に、他ジャンル購入物を追記。

Pinsize.Inc(mitaonsyaさん)

  • 『いちばんすきなひとへ』

甘々ラブラブなのはいいのですが、ヘタリアネタで国の擬人化のため、国際問題が頭の中を回って楽しめません。特に後半の日本×台湾とかもうね。
文化庁メディア芸術祭においてもヘタリアは審査委員会推薦作品になっていますが、作品の善し悪しにかかわらず、国際問題化されてアニメ化が頓挫したように、外の事情が微妙だとどうしてもいろいろ考えてしまいます。
各国のキャラについては、とくに日本などは振る舞いがそれらしいは思います。

  • 『花も、嵐も』

ギャルゲーのテンプレをなぞろうとする半端ない転校生・嵐山さん。ギャルゲーどっぷりの私などには一つひとつがツボで面白すぎます。続きが楽しみで仕方ないです。
また、花園くんの態度で、女性が自分の前を歩いていると、「ストーカーじゃないです……」とかいうあたり、妙に自分が常々思うところとフィットしていたり。まあ、私の場合はガンガンハイスピードで歩いてとっとと追い越していきますけれどね。その際も、前を歩いている女性と道の反対側を歩いて距離を取ったりとか妙な配慮をします。あれ、感想じゃなくなりました。

PARADOX(みさき樹里さん)&鈴木弐番館(鈴木このりさん)

  • 『Love Letter for You Vol.1〜memory〜』

まだ途中で続きがあるため、はっきりしたことは申し上げにくいのですが、とりあえず。一度、リトルバスターズの面子ではゲーム本編で過ぎてきたところを、死んだ当時の年齢で止まっている神北拓也でもう一度乗り越えをし直そうというところが中心課題となっている様子。
このような再帰的構造になっているのは、『リトバス』本編の作品構造に由来するところがあると言えるでしょう。リトルバスターズの面子が通り抜けてきた地点は、虚構世界における経験という微妙な位置づけ(心情的には経験しているものの、現実の生活世界上では実際に通過してはいないというズレ)からなるものなのでしょう。
個人的な理解として、人間の心情として一度得られたことは、いま、各々の登場人物たちにもそのまま重さが覆い被さってくるのでなければ誠実ではない、という印象でいるので、やり直しと見られる流れが、単なる同語反復でないことをVol.2で証明してくれると期待しています。
あと1点は、みさきさんの描く神北のじいさんを見たかったです。倒れたという話があっても絵が1枚もないので。

ivycrown(ゑむさん)

  • 『AFFAIR』

笹瀬川佐々美の憂鬱。状況説明はちょっとはばかられるので本編を読んでね、という感じ。激鬱展開。いや、私はこういうの大好きなんですけれど!Mのターン! 届かない思い、激情の表出。後悔。私もこれまでいろいろと後悔ばかりの人生でしたが、こんな風にぶつけたことはなかったです……ぶつければ新展開もあるのかと思う一方、ぶつけても報われない悲しさがここにあります。まあ、そんなものですよね……。
サラマンダーより、はやーい。とか、おとなになるってかなしいことなの……。とかを思いましました。
あとは、本来だったら、小毬にとってさーちゃんも大切なお友達なのだから、何かフォローしそうな気もするのですが、ここは敢えて捨象して、痛さ倍増ということですね。すっかりこの本の毒気に当てられてしまいました。それくらい強烈。すばらしい。今期のマイベストですかね。

<2/20追記>
雨風色堂(ふーらいさん)

  • 『Little color』

タイトルを見て、すわ「Light colors」のオマージュかと思いブルーになったのですが、そんなことはありませんでした。
背景の描き方に特徴を付けられていて、キャラクタよりもそちらに目がいきました。輪郭線なしで、光の当たる部分だけ明るめの彩色、影はベタ、という木の葉の集積のあたりに。光が当たってコントラストの強いときにはたしかにこんな風に見えます。
リトバス的には朱鷺戸沙耶フィーチャーの印象を持ちました。

conica(紗倉澪さん)&iron(叶ふんわさん)

  • 『女の子同士はノーカウント2』

ノーカウントというか、ノーガードというか、そういう感じの本でした。佐々美さまノーガードで胸を(ry な感じ。しかも、どちらも佐々美が歯がみして悔しがる系の図。トップクラスの運動選手には無駄な脂肪は付きませんのよ!(とさりげなくフォロー)。
しかし、鈴にまで言われたくないわ、ということでプライドがずたずたに……。やるせないですねえ。高みにあろうとする佐々美を引きずり落とすような印象。後段の叶さんの方は佐々美への上述のような要素もありますが、鈴の変身願望がなぜか天然百合志向発言という間違った方向に。鈴だけにさもありなん、という印象です。
表紙は服装がアレなので、手に取るのがかなり恥ずかしかったです。これで全年齢対象(あとがきより)?


merryCLOVER(夕住まうさん)

  • 『Kiss me!』

よらりぃさんとの合同誌。恭こま。両者とも屋上でいちゃいちゃすることでシチュエーション共通化
夕住さんの方は、屋上で待つという小毬の自覚を持ち出し、本編でのあのシーンとイメージをシンクロさせる戦術。
花びらではなく枯葉で寂寞感をもたらしつつ、寒さがふたりでの暖かさへ、という遷移へ。繊細に構成されていると思いました。
繊細さは、おでこへのキスのみで現わされ、その婉曲さも繊細さの感じへと繋がっていると思います。
対して、よらりぃさんの方では、ベタに飴をくわえて迫るところ、恭介が飴を手で取って直に、ということで、こちらは正面突破。その対比もいいものでした。

  • 『ちっちゃな僕ら。』

こちらは夕住さん個人誌。『Kiss me!』の事実を受け、という話。棗兄妹の幼少時にありそうな話を創作して、前作と対比したような話に。葉留佳のお騒がせなところの使い方もいいですし、みんな生き生きしています。

ARI-COM(アリさん)

  • 『届くまで、あと一歩半。』

またも充実の後記に様々なことが書かれてしまっていて、はてさて何を書いたらよいのやらですが、の真クド本Death!(本文参照) 前回までの格好いい真人からいつものアホの子に戻っていろいろやらかしてくれます。笑いと楽しさだとアホアホの真人にとなってしまうところはご愛敬。これも全年齢対象でいいんでしょうか(鼻血)というシチュ。みんなギリギリのところを狙ってきている感がします。
後段の佳奈多ん暴走シチュは、あるあるあるという感じですね。私も佳奈多びいきのひとりですが、かくいう私自身も評論などでご存じのように裏読みと深読みで生きているような身ですから、このような妄想スパイラルにはよく陥ったり陥らなかったり。しかし、この佳奈多はゲーム本編の序盤の鉄面皮っぷりがすっかり消え去っていますね。事実に気づいたときの「……はっ」という顔が激ぷりちー(notみやびちゃん)だったので脳内に保存しました。
あと、「真クド」を「まくど」とよむか「まさくど」と読むか?ということでしたが、わたしはなぜか字面を見た瞬間、音読みの「しんくど」になってしまいます。意味はわかっているけれど、字をみるとどうしても……。というわけで例外その1でした。

睦月屋臨時店舗(睦月まさとさん)

恭介は何時如何にして免許を取ったのかという、本編では誰しもが疑問に持つところを、あるあるネタで突っ走ったギャグ本。
きっとこんな惨状だったんでしょう……。命預けたくないわ。といってもみんなある意味命を救われているのでどうしようもないという。

無料配布本。早めにいったのでいただけたようです。ゲーム中のシチュのイラスト集積本。本編が思い出されます。


甘杏(透音さん)

  • 『Caramel Days』

判型が四角で色が黄色ということは、本のかたちからしてもキャラメルを意識しているんですね。
他愛ないところに宿る想いという印象です。あとは、け、謙吾の微笑みが……。

みけぶくろ(ふくさん、なゆさん、マナさん)

  • 『Valentine for you』

小毬の絵で背後がお花畑で笑顔の決めポーズがあったり、ショタっぽいりっきゅんが目をうるうるさせて(ry という決めの絵があるのに、なぜかメインを張る鈴には決めポーズがないんですねえ。つっけんどんな鈴だけに、理樹に渡すシーンもあれだし、かわいい系志願の話だと鈴の決めポーズのようなものは作りにくいのかもしれませんね。最後の小毬が鈴に抱きつくところも小毬メインですし。小毬のアップの描き込みに力が入っている印象を受けました。

  • 『理樹君の非日常な日常』

来ヶ谷シナリオをやっていると、関連性がわかるというお話。理樹きゅん女体化ですが健全(来ヶ谷的精神は不健全ですが)でしかもかなり練られたお話。恭介の思い通りになるまいとするところも、虚構世界が恭介主導の産物であることをひっくり返す感があり、構成がかなりいい感じです。こういう話好きですね。
ただ、惜しむらくは、ネームにもっと配慮が必要かと。この本に限らず全てで手書きで、後から誤字を別人が直したようで、所々の漢字のみ字体が違い、さらに誤字が直し切れていないという状態。作品への没入感を削ぎます。ワープロ打ちの貼り付けくらいはした方が……。

羽根屋根(くぅくぅさん)

いつもイケイケ由乃さんの、菜々が現れてから臆病になっている自分という話。
裏で菜々も……というシンクロが効きます。相思相愛ですねえ。

  • 『Wondering up and down』

本誌の作者自身が幻想世界の少女と同位置から語っている風がわかろうという作品。
我々は見守ることしかできない、でも、その想いが伝わることがあったなら、という話。

麦畑(高橋むぎさん)

  • 『花の島』

今回はVol.5らしいです。一番おいしい一緒にお風呂シーンの絵がなかったよ(泣)。あったらあったで即18禁行きなんでしょうが。

Pendola(ふゆいちさん)

  • 『Tryple 3』

佐々美の取り巻き三人娘主体の話。暴走しすぎです。愛だろ、愛。

  • 『君といた季節』

葉鍵島でアージュ作品の本……ではなくONE七瀬本。……えろかわせつないです。

picon(舘内あきさん)

  • 『痛恨の七撃』

舘内あきさん復活の七瀬本。再開をお慶び申し上げます。冒頭は七瀬ではなくフラレナオン長森視点。浩平が他の女性とくっついたなら、影で長森はこんな風に思っているのでしょう。そこで「この涙だけがきっとうそなんだ」という長森の台詞にこころの痛みを増幅させる切れ味を感じる。なぜなら、このような偽の言葉による想いこそが、絵に現れるような「みずか」を具現化させたと思えるからです。ここから、長森にとっての永遠の世界が始まる……などと妄想してしまいます。

ギャラリー・フェイク。(わだぺん。さん)

  • 『TIME AFTER TIME』

わだぺん。さん謹製の沢渡真琴フルカラー本。にゃる。戻ってきたとした場合の話として仕上げているのですね。
感情の表出が豊かな真琴の笑い、泣く姿に刮目せよ!ですね。
あとがきで仰っていた親心、というと、祐一が作中で「いい父親になるな、俺は……」と呟いていたのを思い出します。

ここでちょっと脱線。作中、Ending後のぴろとのCGで、真琴が生きていた場合には、祐一のもとには娘として戻ってくるんだろうなあ、というのが私見でして。
この辺り、KanonVFBの麻枝准インタビューの(注8)で「なぜ真琴が[さいふ]を持っていたのか、なぜいつも[ぴろ]に[なつかれて]いたのか、まさか、[ぴろ]が真琴の[おとうさん(orおにいさん)]で、[なかま]に[おねがい]するために[いなくなった]などと、誰が想像できようか!(後略)」
という[○○]は伏せ字になっているネタバレを参照しつつ、以下、考えてみたものです。(「なかまにおねがい」ってのはあれです。最後の美汐の言葉、「たくさん集まれば、とんでもない奇跡を起こせる、ということなのでしょうね」が根拠)
作中、そのテのシーンもあるのにどうして、とお思いの向きもあるかと思いますが、私の中ではそういう位置づけです。
なぜなら、例えば、ベタに恋人として戻ってくるなら『ONE』の例えば椎名でやったように、戻ってくるシーンを直に描いたものが既にあります。
では、なぜ『Kanon』では、感動の再会シーンは避けられたのでしょうか。『ONE』と同じになるから、というのが意見として大勢だからでしょうが、作中外の事情を持ち込むのは真琴にとっては全く関係のない話なので、内在的に考えます。
そうすると、生きているけれど(真琴の姿として)逢えない、と考えるべきです。
ものみの丘では真琴の姿で寝ているCGにあるようなシチュかとおもいますが、実際に街に下りてくることが不可能と考えたら?
ぴろは示唆的に水瀬家に戻って来て住み込みますが、それが真琴の(想いの分の)代理(かたがわり)だとしたら。
ぴろが帰還の際にはものみの丘との通路がふさがれたりしたとしたら。
そう考えれば、例え真琴が生きていようが、死んでいようが、状況はそう変わらないものとなります。
つまり、狐の姿としても、人の姿としても真琴と逢うことはなく、祐一が再びまみえるときは、娘として、という考えに至ります。
そうすると、『CLANNAD』において、幻想世界から脱出する少女が娘の汐として具現化することと共通していると思いませんか。
以前より、Kanon真琴シナリオの乗り超えを企図して『CLANNAD』がつくられた、という指摘をしているのは、このような背後の妄想あってこそ、という訳です。はい。元に戻る。

  • 『水瀬家の日常4』

真琴を尾行しているうちに、名雪の想いが図らずも達成される、幸せの巻。最後の満面の笑顔がいいです。

花楠(カゲロウさん)

  • 『やっぱり美汐が好き!』

kanon真琴シナリオ繋がりで、「天野は相変わらず、おばさんクサイな」の祐一の台詞の拡大版。あずきアイスくらいでひどいいわれようだ……。だが、それがいい、ってやつで。俺だけがわかっている、というのも妄想なのかもしれませんが、それをストレートにぶつけられるとくるものがあるよね、という話。赤面。

チロル文庫(坂口蜜柑さん)

  • 『世界旅行』

ゲーム本編では、ことみの鞄は世界を旅してきましたけれど、この本は、風子がifの世界をいくつも傍観してくる話。
いきなり冒頭衝撃の風子お色気シーンにびびりましたが、平行世界ネタをまぶしつつ、意識不明中の風子が旅してきたというところでつなぎ、ラストは、ゲームの樹下のアレに繋ぐと。構成も上手いですし、本編を活かしきった流れだと思います。
あと、我がサークルをわざわざ訪れて戴き、ありがとうございました。

(何回かに分けて感想を書いてきましたが、これで終了です)

以下、他ジャンル購入物を追記。ここに書いたもの以外にも、評論系や、SS系、ギャルゲー島で何点か。購入ではなくわらしべ長者ブツも。こちらの本がいつも薄くてすみません……。次こそは「お厚いのが押す気」になります(予定)のでなにとぞよろしう。

マリみて
ドム御一行(とととさん)『シュシュ』
 この最終ページにあったのを見落としていました。リリアン野球娘。夏葉薫さんと一緒にオーダーを考えてしまいました。

Bitter Sweets(Haya.さん)『公孫樹』
 いつもながら繊細な絵と表現。憧れます。

す茶らか本舗(大槻弘子さん)『Generalized Amnesia
 聖も蓉子も相互に相手に憧れていたという示唆。相思相愛。

恥骨マニア剛田ナギさん)『Lost Soeur』『GIRLS RUSH!3』
 おなかいっぱいいっぱいです。再録が(いつもながら)分厚っ。