東北は世界の果てか、はたまた北海道は幻想世界か

当然ですがタイトルは「雲の向こう、約束の場所」と掛けています。

朋也と汐が旅行に行った先が、花畑の存在から下北半島だという検証がなされていますが、ここからある程度示唆的な面が現れてくると思います。アニメの各話タイトルでは「世界の果て」とされていましたが、歩いて行ける地続きの世界の端ということです。そうなると、朋也たちが過ごした生活世界(現実世界)の限界がこの場所という位置づけになります。

そこで一度話が飛びますが、行ける先の限界が花畑というのは、『MOON.』と共通しています。そして、そこで「喪失」を経験することも同じプロットです。『MOON.』では、地下20階のこの花畑で、郁未は自分の半身とも思える少年の死を悟ります。

さて、話を元に戻して、今度は逆に「幻想世界」の側から見ると、ロボットと少女は歩いて雪の降るこの世界からの脱出を図ります。「『CLANNAD』と『智代アフター』における「あちら側の世界」観」でも同じことを言っているので繰り返しませんが、麻枝准の作品に特有な「ふたつの世界」の位置づけは過去の天空的な位置づけから『CLANNAD』では「歩いて行ける」という地続きの印象へ変わっています。そこで、地続き感をそのまま体現しているのが、本州と北海道という位置どりになるわけです。ただし、ここでは海峡に阻まれています。

いわゆる1周目では、ふたつの世界はこの海峡に隔てられているため、つながりが得られず汐死亡エンドになります。ここで、下北半島というのが効いていて、もし、津軽半島だったら青函トンネルで繋がっているから1周目からHappy Endになるわけです。下北半島ですと、恐山がありますし、魂を呼び出して会話することになります。まあ、魂の還る場所というのでいいんでしょうか。そこで、使者としてのロボになるというモチーフと微妙なつながりが見られるかもしれません。そして、まあ、やり直しの件はごらんの有様ですよ。
きっと、(ゲームのエンディングに見られる)朋也・渚・汐の3人で行った下北半島には、北海道に向かって橋か何かが掛かっていることでしょう。心理的に。おまえにレインボーでもいいんですが。

で、東北の隅に追いやられた春原はどうなったかというと、どうなったんでしょうかね。東北そのものがいわゆる「永遠の世界」に類する場所だったら、音信不通で二度と会わない、になるんですが、春原は結婚式の時に会いに来てくれますし、電話も繋がります。このあたりが繋がらないので、ともよちゃんが以前に指摘していた春「原」陽「平」=折「原」浩「平」に反応できないでいたのです。