コミックマーケット76・3日目購入同人誌感想

恒例になりつつありますが、同人二次創作の購入物感想を簡単に述べてまいります。

Pinsize.Inc(mitaonsyaさん)

  • 『ぴんさいず絵本 2009 Summer』

列に並んでいる時に回ってきた「おしながき」で、「ONE澪本」と書いてあって、「キュピーン☆」という擬音が頭の中をよぎりました。『ONE』10周年も過ぎ去ったところで、外周大手サークルでまさか『ONE』ネタの本が読めるなんて! しかもちっちゃい子大好きで超画力高いみたさんの絵で! みたさんどんだけ澪好きなんだ!と少々興奮。……した割には、おはなし自体は短くてうーん、という感じだったのですが、影踏みのネタはおなじちっちゃい子でいえば『リトバス』のクドを彷彿とさせ、その場面には寂寥感があったことを思い起こさせます。もちろん、こちらの同人誌にはそのような寂しさは表面化してはいませんが、浩平の心の壁的な表現は垣間見られます。そして、その壁を突き破るかのような澪の突撃。なんという圧倒的幸福。こんな痛気持ちいい世界は私の中にはありません。だからこそ、なおのこと眩しく見えるのでしょう。

  • 『Petit Fours 6』(篤見唯子氏との共著イラスト本)

セツミさんはともかく(ともかくなのかと)、汐で悶え死ねという感じですね。これもやはり幼女か!(澪は幼女ではないですよ)

  • 『クエストやりま専科』

モンハンもROもまったくネタがわかりません。


恭こまアンソロジー『おさらいっぱいのほっとけーき』
表紙の絵と手触りの質感とがともにとてもいい感じです。恭介=透音さん、小毬=悠月さんはベストチョイスですね。また参加者が多く、よくこれだけ多くの方々をまとめきったなと思います。本自体も結構厚いもので。ただ、ひとつだけ、贅沢な望みを言うならば、参加者の方が多すぎたせいか、主要メンバー何人かの長いおはなしも読みたかったな……と。


PARADOX(みさき樹里さん)&ivycrown(ゑむさん)

  • 『筋肉ジャンパーSweet×3』

筋肉ジャンパーはいつの間に季刊になったんだ……。さて、みさき樹里さんの佳奈多が生々しくてとても良かったと思います。もともと、みさきさんの絵の魅力は、骨格がしっかりとしていて、女性であっても結構肩幅があり、それとともに、良い意味で肉感もしっかりしている(性的でなく健康的に)点にあると思います。そのような身体性が、佳奈多の壊れ方でずずいと表面化して、これがとても目を惹きました。ゑむさんの方は、別の意味で肉感的ですね。どきどき。さらに、次号予告や裏表紙の宣伝まで手が込んでいていいですね。

  • 『Love Letter for You Vol.0』(PARADOX)

こちらは完成してから感想を述べたいと思います。


Snow-Covered(桜沢みゆきさん)&Rurirara*(悠月さん)

  • 『なないろお星様』

なんとニッチなことに、リトバス4コマ出演の小毬の妄想娘、毬子ちゃんアンソロの出現ですよ。多くの方の頭の中で補完されているように、今はやりの"恭こま"の結果としての毬子の存在を前提として、親子話を持って来られると、それだけで結構クるものが。そして、毬子のぶっきらぼうぶりが皆様ご期待の通りの鈴二世という設定で、血は争えない、というか恭介の裏にはそんな血が隠されているのか!と改めてここで強く印象づけられました。贅沢な希望をまたここで申し上げると、おまえ(毬子)にレインボーのところや夜空のところはカラーだと映えたのになあ、と脳内補完しているところです。

  • 『-Song for Friends-』(Rurirara*)

ミッションスタート! 2nd Missionの時のカラー本に続くフルカラー本。なんと贅沢。私は、この本のようなポエティックなものも好きですよ。


merryCLOVER(夕住まうさん)

  • 『雨音』

夕住さんも恭こまですよ。「やさしさに包まれたなら」(荒井由実)を思い浮かべました。いいなー、甘々だなー。隠れていたものが意図せずに現れてしまうというのは、そこに直面すると確かに悶えますね。


HONEY DROP(BLIZZARD GIG委託)(みなみまきえもんさん)

  • 『PROGRESS』

佳奈多のわだかまり、葉留佳の意志、ともによく表されていると思いました。みなみまきえもんさんの本は、はっちゃけたものも好きですが、時にこういった痛いところを鋭く突いてくるものがあり、この表現のうまさにも感心します。


睦月屋臨時店舗(睦月まさとさん)

  • 『Chat echaude craint l'eau froide』

鈴が特別支援学級から自立する時の同学級の友達に注目した作品。皆様もそのクラスでの名前が不自然だなという印象は持たれていて、ああ、猫との関係があるのね、というところは理解していたと思いますが、彼(彼女)らからの想いをこのように絵にされると、なかなかに説得力があります。慧眼に感謝。
(まあ、そのような原作の設定も、細かい部分まで整合性に奉仕するものなのではありますが)


melloncollie(ひさねさん)&Pendola(ふゆいちさん)

  • 『たぶん青春』

フルカラーイラスト本。相変わらず画力高いですねー。私のお気に入りは、佐々美のしゃがんだ絵です。普段から身構えている佐々美のちょっと不意を打たれたようなところがいいですね。け、決してスカートのな(ry


梅本制作委員会(茶菓山しん太さん)

  • 『S嬢の秘めやかな悔恨』

何故私はこういった痛い話好きなんですか。弱いままの理樹や鈴ならこのような終わりを迎えても致し方ないということは思いますが。恭介や仲間の支援がないとこういうところに墜ちる、という感じなのでしょうか。

  • 『花舞』

佐々美、想いを表出しすぎるの巻。Mっ気たっぷりですね。しかし、この佐々美、可愛いじゃないですか。

  • 『クド寿司』

ミッションスタート! 2nd Missionでは落ちたこの本をようやく入手。こんなぶっとんだはなしだったのか……。相変わらず不出来で不器用な謙吾、突然のゲスト出演で存在感ばりばりの晴子、可愛いけれど能なしで真人を想うが故にアルコール依存症気味のクド、そして最悪のKY真人、よく見れば真クドまっしぐらですか。ぶっ飛んだ外見の割に実は良くできているんですね。


ARI-COM(アリさん)

  • 『トロピカルハイエンド』

配慮、遠慮の塊になっているクドを持ち前の筋肉さんと脳みそ筋肉さんとで解きほぐす真人。事故の傷・自己の傷・心の傷。細部まで検討し尽くしてつくっているなー、と思っていたら、最後に後書きを大きく超えた真クド語り。愛ゆえにすばらしい勢いで細部まで読み込んで作り込んでいるのだな、というのが読者である私のところにも響いてきます。このような愛をもって作品に対峙できているのは本当に凄いことだと思いますし、これだからこそ、このようないい本ができているのだと思います。愛の力を感じました。真クド白眉の一冊。


ギグス(夾平さん)

  • 『CIDER TRIPS!』

女王猫も猫ゆえに苦手なものがあったのか、というわけで、それを克服しようとする話、けどやっぱり不器用な表出となってしまう佐々美。このあたりの佐々美の複雑さがよく現れていると思います。


羽根屋根(くぅくぅさん)

  • 『honesty』

表紙の絵が既刊のどれかと頭の中で混じってしまいました……。今回はことみが主体。ことみの恐ろしいくらいのこだわりと、それが仲間の存在によって氷解していく様子。いや、確かに原作におけることみの策士ぶりはこのような細部への強烈なこだわりがあって然るべきと思います。これは表面的なことみとその奥に隠されたわだかまりとの間に揺れることみを別の角度から切り取ったものとして優れた観点だと思います。そして、出た、ラストの時を経てそして今も、の跳躍。今回は、渚死亡後のパターンでした。いや、これも何度かやられると次はどっち!?と身構えてしまいますね。

  • 『365日間』

ニュー黄薔薇組ということで全編に黄色い紙を使用ということですね。菜々が既に一員として姉への配慮を、という気の回しよう。由乃押され気味なのは本編譲りですか。


みけぶくろ(ふくさん、なゆさん、マナさん)

  • 『Sugar!』

甘々ゆえのこのタイトルですか。私が麻枝准作品に頻出するモチーフの代表例として挙げている「繋いだ手」を極めて有効に活用しているな、と思いました。汐がいる中での寝床で使うとは予想していませんでしたが! それが同人の良さですね。


チロル文庫

  • 『星型☆ドリーマー』

先日お伝えしたように、今回のマイベストはこの作品です。『CLANNAD』の細部への深い理解と朋也一家及び風子に対する愛のあふれ方、そして、何よりも、風子の意味深な台詞「風子は、汐ちゃんを連れ戻しにきただけです」に始まる風子・汐・朋也で過ごす日のところで、

ぱたぱた…。
並べられていくカードと、笑い声。
………。
俺は思ってしまう。
もし、渚がいてくれたら…
こうやって、三人でトランプをしていたんだろうって…。
それが普通の休日の風景だったんだろうって…。

(中略)

トランプの数字がよく見えない。
どうしてだろう。
ゲームが続けられない。

の部分をさらに深く掘り下げ、朋也の心の中のわだかまりを具体化し、その克服過程を風子の力によるものとして再提示したものとして、白眉の出来だと思います。ゲーム本編では、朋也が本心を風子にさらけ出すことはなかったのですが、それを敢えて行うことによって、再生へのきっかけを明示する、という点に力を感じました。これも愛ゆえの強力な破壊力ですね。


iron(叶ふんわさん)(conica委託)

  • 『家族だからノーカウント』

佳奈多の愛のある狂いっぷりはその愛ゆえにノーカウントということにしておきます。葉留佳が可愛すぎて狂う妹バカ佳奈多が同人界でデフォ化してますね……。これが身から出た錆というやつですか……恐ろしい。


イヅミヤ(依澄れいさん)

  • 『Si Si Ciao!』
  • 『なつやすみのとも』

今回のイラスト本は露出度高いですね。で、気長にストーリーまんがを待ちます。


ドム御一行(とととさん)

  • 『The Right Stuff』

こちらは3日目販売物ではなく、C.Fさんに購入しておいていただいたものです。まず最初に、「ドレミの歌」の替え歌(ラのところ)で「♪な〜は菜っ葉のな〜」と言っておきます。はい。で、気を取り直して、リトバスネタで、佳奈多が自分一人で仕事をため込んだり請け負ったりしてがんばるような描写がありましたが、こちら山百合会においても、乃梨子さんがそのように仕事を一人背負ってしまうという役回りになるという話でした。佳奈多も乃梨子も、よそもの感(疎外感)を有し、外部から見る視点を持っていますので、そのような置き方を自らに課しながら、受け入れられる喜びを、というところに幸福を感じる、と。このようなパターンがあるのかもしれません。